11年末で976億ドル(約8.1兆円、10年比63%増)にも上る手元資金。直近の四半期だけで純利益130億ドルを稼いだアップルにとって、資金の使い途は常に最重要課題だった。ただしアップルは1995年から無配を続けている。前CEOだった故・スティーブ・ジョブズが85年にアップルを追われ、96年に復帰する1年前からずっとだ。復帰後もジョブズが配当を再開することはなかった。アメリカのIT企業は近年の好業績により手元資金が多くなっていて、それを有効活用するべく、M&Aや設備投資、研究開発につぎ込んでいるが、Appleは大型の買収案件はなく、研究開発費も対売上比2.2%と相対的に低く、キャッシュは積上っていく一方だったとしています。
Appleに限らず、株主還元に消極的企業は少なくなく、Microsoftも無配続きで、配当したのが2003年からで、Googleはいまだに配当は実施していないそうです。
こういった背景の中、11年10月にジョブズが死去、新CEOのティム・クックが本格的に舵を取るようになってから、アップルの経営スタイルが少しずつ変わり始めてきているとしています。
その1つが慈善事業だとしていて、ジョブズ氏はボランティアにほとんど関心は示さなかったが、ティム・クックCEOになってからは、従業員が非営利団体などに寄付をした場合、Appleも同額の寄付(1件は上限1万ドル)をするプログラムを発表しているとしています。
そして今回発表された大幅還元について、ある業界関係者は、「中国での商標権問題や労務問題など、大きくなったがゆえに、世界各地で摩擦も目立ってきた。先鋭的なところだけでなく、ステイクホルダーとの関係を意識するなど、アップルもやっと“普通の会社”になろうとしているのではないか」と推測しているそうです。
確かにジョブズ氏からティム・クックCEOになってから、こういった点からも経営スタイルが変わっていることは間違いないと思います。ただ、それは当然の事でジョブズ氏のやり方とクック氏の手法が100%同じという事はあり得ませんね。
こういった事象だけでAppleが「普通の会社」となっていくと言えるかどうかはわかりませんが、Appleが他の会社と違うと言われるかどうかは、革新的な製品を生み出し続けられるかどうかなんだと思います。